診療ノート

虫歯治療は穏やかに 歯周病治療は積極的に【2】

陸上自衛隊で歯科医官として過ごした10年間に、歯科医師としてその後の礎となる出逢いに恵まれました。そのお一人が、外部研修制度をきっかけに師事した沼津の山本 龍樹 先生です。
大塚歯科クリニックの特徴でもある、患者さんの歯をできるだけ削らずに残して守る歯科治療の「原点」をお話しをしたいと思います。


静岡県の滝ヶ原駐屯地時代、沼津市立病院の歯科技工士から地元に凄い先生がいると聞き居ても立っても居られず、研修願いのお手紙を差し上げたのが山本先生でした。

当時(1990年代)の歯科治療は、虫歯があれば直ぐに削って銀歯にしたり、大きな虫歯は躊躇無く神経を抜き、手の施しようがなくなると抜歯する「昭和型の歯科治療」が全盛の時代でした。しかし私が初めて訪れた山本先生の診療所は、患者さんとの丁寧なコミュニケーションのもとで、全ての治療を科学的、論理的に体系立てて提供しており、何より驚いたのはその時代に歯科衛生士が中心の「予防歯科」を日常的に実践されていたことでした。

今でこそ、予防歯科は広がりを見せていますが、山本先生は30年以上前に標準の歯科治療として確立されており当時、20代後半だった私にとってその衝撃は言葉にできないほどの驚きでした。
この外部研修は5年間に及び、研修はまさにパラダイムシフトの連続で患者さんへの想い、職員への配慮、そして臨床家としての圧倒的な知識と技術。私は恩師の背中から多くを学びました。

まさに、私の診療スタイル・歯科医として進む道が定まった瞬間でした。

虫歯は本来、急速に悪化するものではなく時間をかけてゆっくりと進行します。ですから定期検診で経過観察し、虫歯(う蝕)部分を悪化させずに温存しながら健康な歯を残こす事は本来可能です。一方で歯周病は歯ぐきの炎症とともに、顎の骨を溶かし最終的に歯を失います。つまり初期虫歯は焦って削り取らずに穏やかな治療に努め、歯周病は早期に介入して積極的に治療することが何よりも大切です。大塚歯科クリニックで開業から続けてきた「予防中心の歯科医療」を、これから一つずつお話しして参ります。

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