診療ノート
残せる虫歯、残せない虫歯 #1
患者さんは60代の女性です。大塚歯科クリニックに長く通院頂いている患者さんで、臼歯の歯根分割と被せ物を平成25年に保険治療しています。歯根分割は長期予後の望めない治療の1つですが、約10年間は患者さんの努力もあり維持することが出来ましたが、歯ぐきの下まで虫歯が進んできたことから炎症が拡がってきました。
もともと歯ブラシの難しい奥歯ですが、その一番うしろ側、そして大きな被せ物の下で知らずしらずのうちに虫歯が歯の根っこまで進み、歯ぐきや骨の量も減少させていました。ここまで虫歯が進んでしまうと、既に歯の根の治療をして強度(歯の根の強さや根の長さ)が足りないこともあり、長期に保存することは現実的ではありません。 残念ですが、虫歯になった奥歯1本のみの抜歯、幸い隣の奥歯は健全なのでそれ以上の治療はあえて必要ないという治療方針を大塚歯科クリニックとしてお伝えしました。
噛み合わせにも大きな影響はないものの、この患者さんはとてもデンタルIQに富み、ご本人が奥歯1本となってしまうことに不安があり、残りの歯を守る意味でもインプラントで治療をしたいと希望されました。 もちろん後方の咬合支持としての第二大臼歯の存在は理想ですが、私たち大塚歯科クリニックは機能の健全性が担保される限りは理想論だけで、インプラントを含む自由診療を無理におすすめすることはありません。
大塚歯科クリニック 院長 大塚 武仁
日本歯科大学 インプラント科 教授 柳井 智恵
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