診療ノート

歯の根が割れた奥歯をインプラント治療 #3

30代男性

治療中
インプラント埋入手術

インプラント埋入手術写真

主に使用する歯科インプラントは2ピース型で、アパットメント(歯の土台)とインプラント体(人工歯根)の2つに分かれます。その後、アバットメントにセラミックやジルコニアでできた人工歯(クラウン)の上部構造をネジで固定して失われた歯の機能を回復します。つまりインプラント治療は3つの要素で構成されるとも言えます。基本的に大塚歯科クリニックでは、この上部構造の固定には術者可撤式を選択しています。別名スクリューリテインとも呼ばれアバットメントと人工歯を専用のネジでインプラント体に固定する方法です。

一般的には時間もかからず簡単なので、接着によるセメントリテインで固定することが多い上部構造ですが、残存セメントによってインプラント周囲炎の原因リスクとなることが多いため、大塚歯科クリニックでは手間暇を惜しまずスクリューリテインを選択しています。ネジの穴(アクセスホール)は、上部構造の人工歯と同じ色のレジンで塞ぐため通常はまったく見えません。このように上部構造を取り外せることで必要な時は外し精細なクリーニングをしたり、怪我や事故で人工歯が破損した場合の交換も容易です。これは結果として歯科インプラント本体と骨、歯周組織が健全性を保つことに繋がります。

歯科インプラントの埋入(まいにゅう)はチタンのフィクスチャーを、麻酔下で顎の骨に埋め込む外科的手術です。これは一次オペとも呼ばれます。先回の #2 でインプラント体を埋め込む顎骨の状態が良くないと、歯科インプラントの成功率(定着率)が著しく低下すること。それを防ぐために抜歯後の骨を維持・再生する「予防的外科処置」を行ったお話を致しました。
顎骨の量が十分あれば、骨と結合し歯を支えるインプラント体を適切な位置に埋め込むことができるため、よりよい予後につながり歯科インプラントの安定性が高まります。そのため最初に顎骨が歯科インプラント手術に長期的に耐えうる状態かどうか診査診断が大切です。そのうえで歯科インプラントオペに携わる2名の歯科医師が、治療計画を立案しました。

そして今回インプラント埋入へと進みます。これは歯肉を切開して下の顎の骨が出た状態の写真です。下の黒い糸を使って歯肉弁をけん引することで視界を確保しています。患者さんの経過は良好で顎骨の回復も理想的で、歯科インプラント手術に相応しい状態となりました。ここから顎骨(歯槽骨)にインプラントを埋入するための穴を専用のドリルを使って開けていきます。

大塚歯科クリニックでは、ストローマン社、ノーベルバイオケア社、2社のインプラントを使用しています。2社ともにスイスの歯科インプラントメーカーで、海外、国内ともに多く採用されている実績がある歯科インプラントです。

担当歯科医師 : 大塚歯科クリニック院長 大塚 武仁 ・日本歯科大学 インプラント科 教授 柳井 智恵