診療ノート

全ての患者さんにお話したい「歯のはなし」

 

全ての歯牙も臓器と同じように、
人生と共にあるべきです。

大塚歯科クリニック 院長 大塚 武仁

大塚歯科クリニックにご来院される患者さん、遠方にお住まいで通院が叶わない患者さん。すべての患者さんにお話ししたいことがあります。

不思議なことに皆さんをはじめ、私達は食べ物には気を使うのに、食べるための(機能)組織であり、身体の入口であり、生きることの源でもある口腔(お口や歯)に対して、とても無頓着に思います。

食事をすると食べ物と一緒に、お口の中の細菌(虫歯菌・歯周病菌)も消化器官に入ります。それらが原因の可能性とされる病気(全身疾患)の発見は、研究が進む度に年々増えています。

歯周病は大腸がん、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、認知症に至るまで幅広い疾患に関与していることが分かってきました。お口の健康だけでなく全身の健康と、何よりも健康寿命維持のためには、最低でも1日1回の丁寧なセルフケア(歯磨き)と、3ヶ月に一度、歯科衛生士による定期的なプロによる歯のクリーニングがとても大切です。

 

全ての歯牙も臓器と同じように
人生と共にあるべきです。

少し難しい表現なので「?」を感じた患者さんもおいでになるでしょう。これは近代アメリカ歯学界において、歯周疫学の発展において大きな礎となられた歯科医師ハロルド・ワース 先生の「THE MOUTH」という詩の一部分で、大塚歯科クリニックの歯科治療において、私が最も大切にしている考え方です。
医師として技術だけでなく医療人としての道しるべを、多くの歯科医師に遺した臨床哲学のエバンジェリスト、ハロルド・ワース 先生の哲学が、この詩に凝縮されています。誠に僭越ながら私、大塚が抄訳したものをご紹介します。


口とは

  • • 口もとは人間にとってすばらしいものと言える。それは人間の情緒性を表現する時においても、日々の生活にとっても、また人の美しさにとっても欠かすことのできない要素だから…。
    • ロ… それは、今まさに私が生きていることを表わしている。
    • もし動物が歯を失った時、その動物の死を意味するからだ。
    • 歯を失ったとき彼らは生き続けることが不可能であり、その生は終わりを告げ、やがて彼らは死んでいく。
    • 人間にとって、口は会話を楽しみ、愛を語り、しあわせ、よろこび、怒り、悲しみ、美しさを表現する。

THE MOUTH

The mouth in its entirety is an important and even wondrous part of our anatomy, our emotion, our life; it is the site of our very being. When an animal loses its teeth, it cannot survive unless it is domesticated; its very existence is terminated; it dies. In the human the mouth is the means of speaking, of expressing love, happiness and joy, anger, ill temper, or sorrow. It is the primary sex contact; hence it is of initial import to our regeneration and survival by food and propagation. It deserves the greatest care it can receive at any sacrifice.
F. Harold Wirth, DDS

 

Dr. ハロルド・ワース
* Dr. ハロルド・ワース先生は、米国の歯科医師であり教育者です。LSU 歯学部 教授をながきに渡り務め、L.D.パンキー財団 理事長を歴任、近代歯科医学哲学(歯科臨床心理学)の礎をつくられた歯科医師のひとりです。